2010年10月17日日曜日

ワタナベカメラサービスでハッセルの修理

ハッセルの500Cを修理したときのはなし。

eBayで落札し、はるばるミシガンからやってきた500c。
見た目は良かったが届いてみたらコマかぶり、バックシャッターの開閉不良を確認。
わかりやすい不具合すぎて凹む。さすがeBay。


がっくり。

そのまま返品しても良かったけれど、はるばるミシガンから僕のところに来たのも何かの縁。
修理してやる事にした。

売り主には色々と不具合をレポートして修理代を請求し、250ドルのディスカウントで手を打ってくれた。

ハッセルの修理は初めてのことだったので、ネットなどで色々調べてみると、会社から近いワタナベカメラサービスの初見さんが良いらしいとのことで、見ていただくことにした。
その道では駆け込み寺と言われている有名なリペアマンだそうな。
ワタナベカメラサービスは雑居ビルの中に修理工房がある。ドアを開けると初見さんが作業していた。


「すいませーん」と声をかけると作業の手を止めて「どうぞ」と席に座らされ「どうしましたか?」というやりとりから始まり、色々と症状を伝える。

カメラを見せると「結構きれいだね」と一言。
数多くのハッセルを見てきた人に外見は悪くないと言われて嬉しくなる。 しかし、匠は外見にごまかされなかった。 クランクとシャッターを軽く操作しながら「うーん、これはピントきてないでしょ?」と一言。 「エー、そこですか」まだ実写してないのでピントは盲点。 いきなりハッセルのロゴ付きの鉄の塊でできた器具を取り出し、がっちりと組み合わせて、
その場で何か検査が始まる。どうやらボディーの精度を見ている様子。 測定器具を取り付けられ、ハッセルがなんだか重戦車のように見える。 検査の手が止まって「のぞいて見てください、3本の線がずれてるでしょ?」 ファインダーを外した部分につけられた煙突のような測定器具をのぞいてみる。 暗い中に3本ボンヤリ色違いの光の筋が見え、確かに線が不規則に並んでいる。 「この状態だとピントこないです。ミラーのモルトが劣化してるのが原因だから交換が必要です。開放では撮らないですか?」とのこと。

続いてレンズ。 「レリーズからワンテンポ遅れてシャッターが切れてるのがわかりますか?絞りの動きに問題があります。あと、レリーズ後に解放になるのが正常ですが戻りが遅いです。治すには全部バラさないとだめです」 続いてマガジン、蛍光灯にかざし、マガジンスライドのスロットを見る「あー、これは盛大に露光するでしょ?これじゃあだめですね」 テレンプも劣化しているらしい。

メカの動きは軽く、しっかりしているとの事なので、オーバーホールしなくても経年劣化した遮光材やオイルを交換すれば調子良くなるとのこと。 最後に「いつまでに必要?』と聞かれ、急いでいないことを伝えると「修理に10日」 とのことだった。 見積もり金額は安くはないけれど納得の値段。ebayの出品者の提示したディスカウント分を超えてしまうのが少し痛いが、多少頑張れば何とかなりそう。 そんなわけで、ハッセルは初見さんの手に託されたのであった。


===追記===
その後、初見さんから連絡があり、会社の昼休みに速攻で銀座に取りに行った。 明細には以下のように書いてある。 レンズ シャッター関係調整 ボディー ミラー内部受けモルト交換、ピント位置調整、その他オイル交換 マガジン、テレンプ交換、ギヤ調整
最後にコマかぶりが修理されていることを確認するために新品のロールを使って、「大丈夫ですね」と念を押してくれた。
金額は5万円ちょい。やってもらったかいあってフィーリングはとてもすばらしくなった。

トータルで考えると日本で中古を買った場合と大して変わらない金額になってしまったけれど、ハッセルについて色々と勉強になったし、かかりつけの職人さんと出会えた。どこをどう手入れしてあるのかという事をわかった上でカメラを使えるのは気分がいい。

大事に使っていきたい。
#追記:修理伝票があると、次回修理の際に色々と参考になるそうです。